大家・不動産投資家の節税対策とは・・
収入が高いサラリーマン・経営者の場合、節税対策の一部として、不動産投資をされている方は少なくないと思われます。
所得が高い方の場合、税金対策としてアパマン経営をされている方もいます。
所得が高い方は、高額所得者に名前が出ないことが多いですが、これは、その多くが法人化して、給与を法人受け取りにしているからだと推測できます。筆者のお客様でも個人でアパマン経営をされて、利益が出てきた後、法人化される方も少なくないです。これは個人所得を法人所得に移転することによって税率を引き下げる節税手法の1つといえます。所得税は、所得が多いほど、その額に応じて税率が高くなる累進課税制度であるため、所得が高いほど所得税率も上がります(住民税等含め)。例えば、年収4,000万円の場合、課税税率は約55%となり、年収1,800万円の場合、税率は約50%となります。これに対して、法人税の実効税率は中小企業の場合、H28年度で33.8%となっています(税引き前利益800万円超の企業の場合)。税引き前利益800万円以下であれば、概ね21~23%以下となります。
個人の課税税率が法人税率よりも高い場合、この税率差を利用した節税対策が非常に効果的ということになります。
法人化による節税効果
法人化によって、所得分散による節税効果を得ることが可能となります。例えば、
社長の報酬が1,000万円だとします。これを社長に700万円、奥様に300万円に分けて支給すれば、どうでしょう。ちょっと複雑な計算になるので、ここでは省略してしまいますが、所得税は累進課税率になっていますから、かなりの節税になるのです。
このほか、経費として認められる範囲が広くなることです。例えば、法人向け生命保険の50%または全部を経費計上できることや、自宅または所有アパート・マンション等建物を社宅として、その家賃を法人の費用とすることもできます。また、欠損金を9~10年間繰り越すことができるため、利益の圧縮が個人所得よりも容易になるというメリットがあります。
減価償却による節税効果
その次に、アパートマンション(減価償却資産)を取得することで、多額の経費を短い期間で計上することで、利益を圧縮し個人の場合は所得税住民税を、法人の場合は法人税住民税を節税することができます。減価償却資産とは建物・車両など長期間使用できる資産のことで、購入した年だけ経費計上をするのではなく、税法に決められた期間に沿って計算し、各期間ごとに経費として計上することになります。この節税方法を業界では「課税の繰り延べ」といっています。課税の繰り延べは「一時的に所得が増えるものの将来の所得は不安・不透明」といった場合に非常に有効です。芸人の一発屋のような方の場合、当たった年の収入が1800万だとすると50%課税となり、収入の半分が税金として持っていかれます。これを経費計上することで利益を圧縮し、税率を下げ、節税した分を翌期以降に繰り延べていくことができます。
建物割合の大きな不動産(海外不動産など)での節税
代表的な例として、「アパート・マンションのような建物割合の大きな不動産」に投資することによって経費として計上していく方法です。木造建物の場合、22年の耐用年数を過ぎると簡便法で4年償却できます。日本では、あまり見られませんが、海外不動産だと購入代金を4年で経費計上し、会計上ではほとんど価値がないにも関わらず、売却時には購入時とほぼ同額で売れたなんていうこともあります。最近では、関東関西の人気エリアではアパマン経営の人気が高いこともあって、購入時と同額、もしくは高く売れたということもあるようです。某芸能人もほぼ購入時と同じ金額で売却できたとブログ上で明かしてもいました。
また住宅を5年超保有して売却すると、長期譲渡所得の税率は20.315%となります。この税率を適用すると、総合所得税の最高税率 約55%と長期譲渡所得税率 約20%の差額分を節税することになるため、所得税の課税率を低くして、課税を繰り延べ、最終的には課税の繰り延べにならない出口戦略を立てることができるのです。
リスクヘッジとして
ただ最近、実際に国内不動産市場が飽和ではないかと一部のアパマン大家の中には、アパートを一旦売却して、身軽になるという選択肢を採る人も出てきました。これは不動産市場価格の上昇もあるからです。いまが売り時と考えたのでしょう。サラリーマン経験者で堅実で研究熱心な方のことですから、いろんなデータも見ての判断だと思います。某公共放送の「クローズ○○」でもバブル期並みの不動産価格高騰と番組を組まれていました。
実際に統計上ですが、
不動産価格指数(住宅)の推移(出典:国土交通省)
http://tochi.mlit.go.jp/kakaku/shisuu
H29 地価公示の概要(出典:国土交通省)
http://tochi.mlit.go.jp/kakaku/chikakouji-kakaku
不動産価格指数(住宅)の推移の統計データを見ても、マンション需要は旺盛で高い価格での売買となっています。分譲マンションの価格は、首都圏だけでなく、全国でも13年以降価格の上昇が顕著になっています。
市場で流通している収益不動産の中には、ここ数年で、価格が1.5倍以上ということも珍しくない状況です。
地価公示の地価は不動産バブルとまではいえませんが、大都市の一部エリアでは公示地価が示すようにミニバブルの様相を呈しています。
この状況から物件価格が高値圏という読みの方は、購入ではなく、売却したほうが得だと考える人もいることでしょう。さらに買い増しをする人もいるかもしれませんし、なにかの弾みで不動産価格が暴落か?と考える人もいるかもしれません。国内不動産での投資が少し不安だという方は、外貨建てや貯蓄型金融商品での資産運用などの分散投資もリスクヘッジする良い方法だと思います。